約 50,436 件
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/10714.html
縛鎖の暗示(ばくさのあんじ) +目次 登場作品リンク 関連リンク関連項目 類似項目 登場作品 リンク 邪龍ニーズヘッグが使用する強力な暗示にして呪縛。 暗示を掛けたものに絶大な魔力を与える代わりに、対象が改心や悔恨の意識を抱いたり、ニーズヘッグにとって都合の悪い行動をすると、対象の意思を奪い従順な手駒とする。 掛ければ掛ける程、効果は増していき、暗示の力が増すと、暗示を以てしても消せず穢れないたった1つの想いがある場合、それを残し、ニーズヘッグに意思を乗っ取られる。 その様子を実際に見たリッピは「虫唾が走る程の下劣な悪意によって生まれた邪悪な呪い」と評している。 ▲ 関連リンク 関連項目 ゼファー ▲ 類似項目 ▲
https://w.atwiki.jp/ouranos/pages/219.html
《死封印の鎖》(しふういんのくさり) 永続魔法 自分の手札・デッキ・墓地から「封印されし」と名のついたモンスター5種類をゲームから除外して発動する。 自分の手札またはデッキから「エクゾディア・ネクロス」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターは効果モンスターの効果では破壊されない。 このカードがフィールド上から離れた場合、そのモンスターをゲームから除外する。 ―関連項目 《エクゾディア・ネクロス》 《封印されしエクゾディア》 《封印されし者の左足》 《封印されし者の左腕》 《封印されし者の右足》 《封印されし者の右腕》 【フリー作品】
https://w.atwiki.jp/fullgenre/pages/66.html
鎖を解く鍵 ◆D2n.chRBO6 「圭ちゃん、詩音、レナ、沙都子。それから――」 最初はただの幻像だと思った。 だって彼は『あの日』から一度も私の目の前に姿を現さなかった。 『あの日』からあの笑顔もあの声もあの温もりも、見て、聞いて、感じることなどもう、できないものだと思っていた。 雛見沢から姿を消した、彼。 消したはずの―――彼。 なのに。それなのに、あの空間の中に、彼は居た。 現実味の無い事態への驚愕により声を掛けることは出来なかったが、あそこに立っていたのは、確かに彼。 嘘だ嘘だと否定の言葉が頭の中を飛び交う。 けれど、名簿に書いてある名の持ち主は、確かに彼。 「悟史」 そう、北条悟史。沙都子の兄。 ずっと逢いたかった。 ずっとずぅっと、待っていた。 これからも信じて待ち続けるつもりだった。 その思いが、漸く報われるのだ。 「待ってて悟史、絶対に私……!」 ――――草木が身体を擦り合わせる音がした。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「面倒な事になったわね」 強制された殺し合い。 多くの人間たち。 己を束縛する首輪。 一番厄介なのは首輪だ。禁を犯せば爆発してしまう。 この小さな輪っかに爆弾が仕組まれているというのが単なる脅しではないことは既に視認済みである。 「しかも」 アラストールとのコンタクト。 それができなくなっているということは、この身体に備わった能力が何らかの形で制限されている。 やはりこれも首輪による働きか。ならば首輪を調べる必要があるか? 「なるほどね。まぁ一人くらい足手まといが居ても良い」 主催者の言いなりになるのは気が引ける。更に『紅世の徒』以外に刀を振るわねばならないのだ。 だが、首輪さえ解除することができたら、殺し合う理由が無くなる。 万が一無理だった場合も、幸い『紅世の徒』を誘き寄せる餌、坂井悠二は此処には居ない。 ならば主催者の言うように最後の一人を目指し、元の世界に生還しよう。 「だったら――」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ どうしようどうしようどうしよう。 この赤い髪の女は危険だ。脳がそう言っている。 物音を聞き取った魅音は、草陰から女の行動を見守っていた。 こちらに向かってくる気配は無い、だがこの至近距離ではいつ気付かれるかわからない。 それに、此処には他の仲間も連れて来られている。 もしこの女と逢ってしまったら、きっとみんな―――。 考えたくないけれど、実際に一人の少女が目の前で殺されるのを目撃している。 有り得ない、なんてことは無い。おかしくはないのだ、何が起きたって。 どうするべきだ? ここでこの女を殺す? 駄目だ、きっとこの女には勝てない。 ならばどうすればいい? 逃げてみんなに危険を知らせる? 無理だ、きっとそうしている内に見つかってしまう。 だったら、だったら一体どうすれば――――!? 「だったら――」 赤い髪の女が此方を見た。 視線が、交差する。 「早速だけどこれ、もらってくわよ」 「……………え?」 瞬間、何故か、自分の胴体が遠くに見えた。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 赤い髪の女――シャナは、首と胴の繋ぎ目から血を流す亡骸へと近付き、手を伸ばす。 緑髪の少女――園崎魅音の遺体は未だ殺したばかりだからだろうか、体温を保っていた。 彼女には申し訳ないが、今はこうするしかないのだ。 「まぁ、人間のお前でも良い道具になったとは思うわ。感謝くらいしてやっても良いくらい」 血塗れの首輪を摘み上げ、デイバックの中へとしまった。 あとは頭がキレそうな人間を探し、分析させるだけだ。 「じゃああとは役に立ちそうな人間を見つけるだけね。…ついでにアラストールも」 右手に握った元は黄金だった紅の剣に、灼眼を映す。 その中に宿った炎は、消え去る様子は無い。 【一日目深夜/B-2 森】 【シャナ@灼眼のシャナ】 [装備]:黄金の剣@ゼロの使い魔 [所持品]:支給品一式、確認済み支給品1~2個 [状態]:健康 [思考・行動] 3 首輪解除が無理なら殺し合いに乗る 2 首輪の解除ができそうな人間を探す 1 主催者打倒 【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に 死亡】 ※ 魅音の死体とデイバックは放置されています。 ※ 首輪はありません。 時系列順で読む Back 乱(みだれ)後… Next ”The third man” in the game to try again 投下順で読む Back 乱(みだれ)後… Next ”The third man” in the game to try again シャナ 061 フレイムヘイズ×矛盾×雌伏 園崎魅音
https://w.atwiki.jp/gitadoraweekly/pages/163.html
※内容に相違・漏れがある場合や、プレイヤー名を変更したい場合は@gitadoraweeklyへ御申告願います。 楽曲 鎖〜KUSARI〜 YUA 難易度 BAS ADV EXT MAS BPM 2.10 4.20 5.70 7.40 164 Rank PlayerEntryName Part Level Rate Skill Score Combo PlayerID 1位 わたしです(^o^) MAS 7.40 MAX 148.00 1030000 801 2位 スコアタのなかのひと MAS 7.40 90.93% 134.58 860276 467 曲別 HOT Rankingへ Topページへ
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1083.html
400 三つの鎖 19 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/05/26(水) 18 37 15 ID hbwZRgYX 三つの鎖 19 公民館での葬式にはびっくりするぐらいの人が集まった。 国籍も様々だ。明らかに英語でない言葉まで飛び交う。 その中で明らかに一般人とは違う空気を醸し出す者も混じっていた。 警察官だ。柔道の稽古で見知った顔も混ざっている。 昨日、病院で雄太さんの遺体を確認した。 そこで洋子さんは普段の様子からは想像できないほど取り乱した。 今も喪服を着て呆然としている。 葬式の段取り等は雄太さんの勤めている会社が行ってくれているけど、洋子さんが悲しみに打ちひしがれているため、実質的な喪主は夏美ちゃんだった。 雄太さんは知り合いが多いのか、会社の通訳の人と一緒に夏美ちゃんは今も挨拶に走り回っている。 そばにいても何か手助けできるわけでもない。それでもそばにいたかった。 夏美ちゃんを捜していると、人だかりができていた。 近づくと怒声が聞こえてくる。 「あんたが中村さんを殺したんだろ!?」 穏やかではない内容。 一人の若い男が年かさの男につかみかかっている。 「あれだけ功績をあげた中村さんを世界中に飛ばして、それでも業績を上げる中村さんを疎んじていただろ!?」 怒声が公民館に響く。明らかに冷静でない状態だ。 掴みかかられた年かさの男は蒼白になって突っ立っている。 止めようと近づくと、知っている声が響く。 「やめてください」 夏美ちゃんの声。 静かな声なのにざわめきを制する不思議な声。 夏美ちゃんはゆっくりと歩いてくる。 背の低い、どこにでもいそうな普通の女の子。 それなのに参列者は気圧されたように道を開けた。 「父は海外への転勤を誇りに思っていました。多くの方と知り合う機会を得たと生前に申していました」 夏美ちゃんの静かな声が公民館に響く。 「父は会社を誇りに思っていました」 年輩の男に掴みかかっていた男は恥じたように手を離した。 不謹慎かもしれないけど、僕は夏美ちゃんに見惚れていた。 普段は元気で少し子供っぽいところのある夏美ちゃんとは違う姿。 大人びて落ち着いた振る舞い。凛とした声。 夏美ちゃんと目が合う。 お互いに微かに会釈して夏美ちゃんは会社の人と一緒に去って行った。 そばにいたいと思ったけど、いても邪魔になるだけだと分かってしまった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 葬式は社葬という形で行われた。 本来なら家族で弔ってから行うのが一般的だけど、雄太さんと洋子さんのご両親はすでに他界し、親戚も少ないために雄太さんの勤めていた会社が手伝う形になった。 また、雄太さんの海外の知り合いが大勢来るため、日本式のお葬式とは少し違う手順で行われた。 僕は会社の人とお供え物の整理をしていた。 海外の人、特に欧米とは違う国の人がそれぞれの風習で贈り物を持ってきたおかげですごい事になっている。しかし、いちばん多いのが現金や宝石類、小切手だった。娘さんのこれからの生活に使ってほしいとのことらしい。 雄太さんは海外にいる時でも娘の事をよく話したのだろう。 「あの、お兄さん」 会社の人とお供え物の整理をしていた僕に夏美ちゃんが声をかけてきた。 微かに青ざめた顔色以外は全くいつも通りだった。それが逆に不安を感じさせる。 「出棺の際にお兄さんも棺を担いで欲しいのですが、お願いしてもいいですか?」 「…僕でよければ喜んで」 一度しか会った事がない僕が引き受けていいのか一瞬迷ったけど、夏美ちゃんが望むなら引き受けようと思った。 「ありがとうございます。お父さんもきっと喜びます」 凛とした夏美ちゃんの声。 何を言えばいいのか分からない。 「お願いします。それでは失礼します」 そう言って夏美ちゃんは背を向けた。 気丈だけど、どこか儚く感じる背中。 「夏美ちゃん」 その後ろ姿に思わず僕は声をかけていた。 401 三つの鎖 19 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/05/26(水) 18 37 52 ID hbwZRgYX 夏美ちゃんは振り向いた。 「何かあったらいつでも言って。僕にできる事なら何でもする」 夏美ちゃんは微かにほほ笑んだ。 「ありがとうございます」 そう言って夏美ちゃんは去って行った。 凛々しい後ろ姿。小さな背中なのに、不思議な頼もしさを感じる。 突然の父の死にも気丈に振る舞い、僕の気遣いに対しても笑顔で対応する夏美ちゃん。僕よりも年下の女の子なのに、芯は僕とは比べ物にならないほど強い。 微かに感じてしまう身勝手な寂しさ。 夏美ちゃんの立派な姿に安心する気持ちと、頼って欲しいという相反する身勝手な気持ち。 僕は雑念を振り払って目の前の作業に集中した。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ お葬式は滞りなく進んだ。 火葬場に棺が運ばれる。 洋子さんは呆然と棺に寄り添っていた。 夏美ちゃんが洋子さんの手をとり棺から離した。 棺が火葬炉にゆっくりと運ばれていく。 それを見つめていた洋子さんが突然棺に走りだした。 「やめろ!雄太を焼かないで!」 棺を運ぶ係の人に掴みかかる洋子さん。 洋子さんは棺にしがみついた。血走った眼で周りを睨みつける。 尋常でない様子の洋子さんに誰も動かない。僕は意を決して洋子さんに近づいた。 「洋子さん。落ち着いてください」 「何が落ち着いてだ!」 洋子さんの叫びが響き渡る。 「もしかしたら、もしかしたら雄太は動くかもしれないじゃないか!息を吹き返すかもしれないじゃないか!それなのに焼いたらどうなる!本当に終わってしまう!」 洋子さんは棺にしがみついてまくしたてた。 明らかに普通でない。洋子さんの瞳には熱に浮かされたような奇妙な光を放つ。 「ちょっと前まであれだけ元気だった!昨日電話した時の声もいつも通りだった!死んだなんて嘘だ!疲れて眠っているだけだ!」 「落ち着いてください」 洋子さんは僕の胸ぐらをつかんだ。 こんな小さな手なのに、驚くほどの力で締め付ける。 「幸一君だって電話の声を聞いただろ!?雄太が私を置いて死ぬはずない!死ぬはずがないんだ!」 洋子さんは僕の方を向いているけど、僕を見ていない。 焦点の合っていない瞳に背筋が寒くなる。 僕には洋子さんの気持ちは分からない。ここまで深く人を愛した経験も、失った経験もない。 でも、もし夏美ちゃんが亡くなったら、僕も洋子さんのように取り乱すかもしれない。 「お母さん!」 夏美ちゃんの凛とした声が火葬場に響く。 「お母さん。お父さんは死んだんだよ」 洋子さんは呆然と夏美ちゃんを見た。 夏美ちゃんはゆっくりと近づき、洋子さんの手を握り僕の胸ぐらから離した。 「私達がしっかりしていないと、お父さんも安心できないよ」 しっかりとした声で洋子さんを励ます夏美ちゃん。 洋子さんは夏美ちゃんにしがみついて泣いた。夏美ちゃんはそっと洋子さんの背中に腕をまわして抱きしめた。 火葬場に洋子さんの泣き声が響く。 参列者も涙ぐんでその光景を見守った。 夏美ちゃんは火葬場の係の人を見た。その毅然とした姿に係の人は気圧されたように一歩下がる。 「続けてください」 その声は凛としていて、微塵も震えていなかった。 「あの、いいのですか」 係の人は恐る恐る尋ねた。 「続けてください」 夏美ちゃんは繰り返した。 棺が火葬炉にゆっくりと入って行った。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 最後は夏美ちゃんの挨拶でお葬式は終了した。 402 三つの鎖 19 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/05/26(水) 18 38 39 ID hbwZRgYX 本来なら喪主の洋子さんがするはずだが、洋子さんは火葬場から戻っても呆然としていた。 夏美ちゃんは日本語と流暢な英語で挨拶をした。 その凛とした姿に他の参列者は胸をうたれた様子だった。 夏美ちゃんが英語を得意な事を僕は知らなかったけど、得意な理由は察しがついた。 海外に住む事の多いご両親に会いに行くときに困らないようにだろう。 お葬式が終わって後片付けを手伝っていると、会社の方が僕に声をかけてきた。 その人から雄太さんからの遺書を渡された。 雄太さんはもともと海外勤務が多く、中には政情が安定していなくて治安の悪い国に行くことも多かったらしい。それで多くの人にあてた遺書を残していた。 一度しか会ったことのない僕に遺書を当てる理由は一つしか思い浮かばなかった。 僕は礼を言って遺書を受け取り懐に入れた。 会社の人に夏美ちゃんと洋子さんを家に送るように言われた。後は会社の方でやってくれるらしい。 僕は礼を言って夏美ちゃんと洋子さんを探した。 二人はすぐに見つかった。呆然とする洋子さんに寄り添う夏美ちゃん。 「夏美ちゃん」 声をかけると夏美ちゃんは振り返った。少し疲れた様子。 「会社の人が後は任せてだって。家まで送るよ」 その後、タクシーを呼んだ。 タクシーの中で、誰もが無言だった。洋子さんは疲れ果てたように眠った。 マンションの郵便受けには多くの手紙が入っていた。エアメールもたくさん入っていた。 僕は洋子さんをベッドまで運んで横にして布団をかぶせた。 部屋を出てリビングに行くと夏美ちゃんが飲み物を入れてくれた。 「今日は本当にありがとうございました」 夏美ちゃんはそう言ってコップを渡してくれた。 微かに青白い顔以外はいつも通りの夏美ちゃん。それが危なっかしく感じる。 「夏美ちゃん。台所を借りていいかな。何か作り置きしていくから」 夏美ちゃんは遠慮したけど、僕は押し切って台所に入った。 冷蔵庫を確認する。すき焼きのための材料が入っている。 雄太さんの遺品となった牛肉もある。神戸牛に松坂牛などの高級な牛肉。 冷蔵庫を確認してカレーにする事にした。ねぎなどを入れて煮込む 料理の途中で雄太さんの手紙を読んだ。 『幸一君がこの手紙を読んでいるという事は、残念ながら僕は死んでいるということだろう。万が一なにかの手違いで受け取った場合は以降の文章は無視しても構わない。 夏美はまだまだ脆い所がある子だ。僕の死に嘆き悲しむだろう。幸一君がこの手紙を手にした時、夏美との関係がどうなっているかは分からない。もしかしたらすでに別れているかもしれない。 それでも夏美の事を気にかけてあげて欲しい。支えてあげて欲しい。勝手な頼みで申し訳ないが、娘を頼む』 短い内容。それで一度しか会ったことのない僕に出した内容は夏美ちゃんを頼むと。 雄太さんは夏美ちゃんの事を分かっていなかった。夏美ちゃんと雄太さんは離れて暮らしていたから娘の成長に気が付いていなかったのだろう。今日の夏美ちゃんの姿は誰がどう見ても立派だった。僕の支えなど必要ないぐらいに。 料理を続けながらぼんやりとそんなことを考えた。霜降りのお肉を煮込むとただでさえ柔らかいお肉がさらに柔らかくなってしまうので、フライパンで炒めてから鍋に入れて短時間煮込んだ。 僕にできる事はこれぐらいしかなかった。 料理を終えて台所を出ると、夏美ちゃんはソファーの上でぼんやりとしていた。 「カレーを作ったから、お腹がすいたときにでも食べてね」 夏美ちゃんはぼんやりと僕を見た。 「今いただいてもいいですか。カレーの匂いを嗅いでいると、なんだかお腹が減ってきました」 僕はすぐに用意した。ご飯は冷凍したものを解凍した。 用意しながら僕はほっとした。食欲があるうちは大丈夫だ。 「お待たせ」 作ったばかりのカレーを夏美ちゃんはゆっくりと食べる。 「おいしいですね」 わずかに頬を緩ませる夏美ちゃん。 「三大和牛が全部入っているから」 「すごい豪華ですね」 夏美ちゃんの表情が曇る。 「お父さん、本当に馬鹿です。はしゃぎすぎですよ。会社の人が言っていました。お肉を手に入れるために会社の知り合いの方に頼んだらしいです。完全に公私混同ですよ」 力なく笑う夏美ちゃん。 僕は戸惑った。どう対応すればいいのだろう。 「昔からそうです。お父さんは親バカでした。すごく恥ずかしかったです。お兄さん、私にも反抗期があったんですよ。小学生の時、お父さんなんか大嫌いって言った事があります」 夏美ちゃんは懐かしそうに笑った。 403 三つの鎖 19 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/05/26(水) 18 39 51 ID hbwZRgYX 「お父さん、ショックで部屋から出て来なくなっちゃいました。体調不良って言って会社もお休みしちゃいました。本当に体調不良になっちゃったみたいでした。そんな日が三日続いて、なんだか可哀そうになっちゃいました。それで私の反抗期はおしまいでした」 夏美ちゃんはうつむいた。スプーンを握る手が微かに震える。 「お父さんは家にいる事の方が少なかったです。お仕事で世界中を飛び回っていました。私、すごく寂しかったです。でも、お父さんは外国からいっぱいお手紙出してくれました。メールしてくれました。電話してくれました」 僕は黙って耳を傾けた。 夏美ちゃんは淡々と語った。 「それにですね、家にいるとお手紙がたくさん来るんです。お父さん当てです。英語のお手紙もたくさんありました。内容はお父さんに感謝するってお手紙ばかりでした。お父さんは商社マンでしたけど、お金儲けよりも取引相手の利益を考える人でした」 雄太さんの姿が脳裏に浮かぶ。一度しか会ったことのない人だけど、優しい人だとは感じた。 夏美ちゃんはそんな雄太さんを見て育ったから、優しい子に育ったのかもしれない。 「私、そんなお父さんは誇らしかったです。だから寂しいのも我慢しました。お父さんは世界中で色々な人のために頑張っているんだって。時々帰ってきてくれて一緒にカレーを食べるだけで我慢しようって思っていました。それなのに死んじゃいました」 夏美ちゃんの目尻に光るものがたまる。 「ひどいです。お母さんとお兄さんと四人ですき焼きしようって言ってたのに。寂しかったのも我慢してたのに」 夏美ちゃんの目から涙がぽろぽろあふれる。 「お父さんの嘘つき!」 夏美ちゃんは立ち上がって叫んだ。リビングに悲痛な叫びが響く。 「一緒にすき焼きしようって言ってたのに!帰ってくるって言ってたのに!」 雄太さんの手紙の内容が脳裏に浮かぶ。 分かっていないのは僕の方だ。 「お父さんなんか大嫌いです!昔からそうです!いて欲しい時にそばにいなくて!授業参観の時も運動会の時も誕生日の時もです!寂しかったのに!」 僕は夏美ちゃんのそばに近づいた。夏美ちゃんは僕の胸を叩いた。 小さな手。叩かれても痛くもかゆくもないのに、胸に響く。 「お父さんの馬鹿!なんで死んじゃったの!お父さんなんか大嫌い!」 夏美ちゃんは小さな手で僕の胸を何度もたたいた。悲しくなるぐらい非力な力で。 「電話もメールも手紙もいらなかった!誕生日のプレゼントもいらなかった!生きてそばにいてさえくれたらよかったのに!なんで!なんで死んじゃうの!ひどいよ!お父さんの馬鹿!」 涙で顔を濡らしながら夏美ちゃんは小さな手で僕の胸をたたいた。 僕は黙って夏美ちゃんのなすがままにまかせた。 夏美ちゃんは僕の背中の腕をまわして思い切り抱きついてきた。 僕もそっと夏美ちゃんを抱きしめた。 体を震わせて夏美ちゃんは泣きじゃくった。お葬式の時涙を見せずに毅然としていたのに、僕の胸の中でわんわん泣いた。 雄太さんは正しかった。僕は何も分かっていなかった。 夏美ちゃんは泣くのを我慢していただけだった。雄太さんのお葬式でみっともない姿を見せる事が出来なかっただけ。 雄太さんの手紙が脳裏に浮かぶ。短い文面。娘を頼む、と。 その言葉が胸にのしかかる。僕に何ができるか分からない。 今の僕にできるのは、そばにいる事だけ。 僕は泣き続ける夏美ちゃんをそっと抱きしめた。夏美ちゃんは泣き続けた。 夏美ちゃんは泣き疲れたのか僕の胸の中で眠ってしまった。 僕は夏美ちゃんをベッドまで運んで布団をかけた。 どうしようか。あの二人をそのままにするのは不安を感じる。 残ろう。少なくとも明日の朝までは。 携帯を取り出し父の電話にかけた。ワンコールでつながる。 『幸一か。どうした』 感情を感じさせない父の声。 「今中村さんの家にいる。明日の朝までいていいかな」 『迷惑をかけないようにしなさい』 「うん」 『もし何かあれば外の覆面パトカーに警官がいるから、遠慮なく頼りなさい』 「分かった」 『おやすみ』 それで電話は切れた。 僕はテレビをつけた。ちょうどニュースが始まっていた。ディスプレイ上にアナウンサーが無表情にニュースを読み上げていた。 『警察官三人を含む四人が殺傷された事件は未だ解決の糸口はつかめていないようです。入院している生存者の警察官は今も意識不明です。警察はこの件に関して広く情報を求めています』 僕はテレビを消した。 404 三つの鎖 19 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/05/26(水) 18 40 37 ID hbwZRgYX 雄太さんは殺害された。 巡回中の警察官二人も殺害された。それに加えランニングしていた非番の警察官一名も意識不明の重傷を負った。 未だに犯人は捕まっていない。 警察の発表によれば、事件の発覚は次のようになっていた。 巡回中の警察官二名が不振な物音を聞き、現場に向かうと連絡があり、それ以降連絡が途絶えた。 他の警察官が捜索したところ、人気の少ない道で雄太さんと警察官二名の遺体、そしてジャージ姿で意識不明の重傷を負った男が発見された。 三人は首の骨を折られて死亡していた。病院に運ばれた一名も首の骨を折って重傷。 全員が素手で殺傷されたと断定された。全員頭から投げ落とされた。 重傷を負った男は現役の警察官で、僕も知っている人物だった。柔道の稽古で何度も見た事がある。 この警察官は非番の夜はいつもランニングしている事は知られていて、殺人の現場もランニングコースだった。恐らく通りがかったところを犯人に殺されたのだろう。 僕にはあの警察官が素手でたおされた事が信じられなかった。オリンピック候補選手にも挙げられた事がある強豪だ。何度か練習した事があるけど、僕とは比べ物にならないほど強い。 その人物が素手でたおされるなんて、信じがたい事だった。 テレビでは雄太さんの事が詳しく説明されていた。 雄太さんは商社の世界では有名な人物だったらしい。南アフリカや中東など、一般的に治安が悪いと言われている国を駆け回っていた。仕事の関係で逮捕、誘拐されたことも何度もあるらしい。 また、かなりの業績を上げていたらしい。取引相手だけでなく、会社にも大きな利益をもたらしたようだ。雄太さんの勤め先の成長につながる結果を出していた。 テレビでは犯行の動機として仕事関係が挙げられていた。 犯人像についてはまとまった見解は出ていない。 雄太さんは大柄だ。身長は190cmを超え、体重も体格相応。殺害された警察官もそれなりの体格だったらしい。特に重傷を負わされた警察官は僕よりも大きく、重い。 大柄な男四人を投げ飛ばし首の骨をへし折る。そのうち一人はオリンピック候補選手にも挙げられた男。そんな事が出来る人物は限られている。 それなのに未だに犯人は捕まっていない。 僕は心の底で恐れていた。 この凶行を行うことのできる人物を一人だけ知っている。 彼女なら実行できる。 重傷を負った警察官とは何度か練習した事がある。桁違いの強さ。それでも彼女には遠く及ばない。 動機もある。直接雄太さんに殺意を持っているわけではないけど、動機には違いない。 梓にとって夏美ちゃんの父親というのは動機に含まれるに違いない。 気がつけば随分と時間が立っていた。 額を手の甲で拭うと、汗がべっとり付いていた。 僕はため息をついた。まだ梓が犯人とは決まったわけではない。 というよりも僕の考えすぎだろう。梓がそこまでする理由は無い。本当に夏美ちゃんが憎いなら、直接夏美ちゃんに手を出すに違いない。 梓は冷静に見えて沸点はかなり低い。良くも悪くもすぐに怒る。それでも今回のように関係の無い人物まで殺す事はしないはず。 それでも僕は不安をぬぐえなかった。 ため息をついて僕は窓の外を見た。外は微かに明るくなっていた。 娘を頼む。雄太さんの手紙が肩に重くのしかかった気がした。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/991.html
217 三つの鎖 15 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/02/05(金) 22 41 29 ID NJzB+isD 三つの鎖 15 昨日の夜、私を振りほどいて兄さんが夏美を追った後、私は兄さんの部屋にいた。兄さんのベッドに転がりぼんやりしていた。 抱きしめた兄さんの枕から兄さんの匂いがする。 脳裏に私に背を向ける兄さんの姿が浮かぶ。私は枕をきつく抱きしめた。 兄さんにとってあの女は私より大切なんだ。家にいる間は私だけを見てくれると思っていたのに、兄さんはあの女が家に入るのを笑って容認した。家にいるときだけは私の傍にいて欲しいという私を振り切ってあの女を追いかけた。 涙がとめどなく溢れた。 どれぐらいそうしていただろう。玄関に誰かが帰ってくる音がした。 兄さん。私は部屋を飛び出して玄関に向かった。 でもそこにいたのは京子さんだった。 私はその場にへたり込んだ。兄さんじゃない。 「梓ちゃん?どうしたの。」 京子さんは私の様子にすぐ気がついたようだ。駆け寄り私と目線を合わせた。 その後私は京子さんに連れられ自分の部屋に戻った。京子さんはアイスティーを持ってきてくれた。 「何があったの?」 京子さんは私の頭を撫でて優しく尋ねた。兄さんと夏美が屋上でシている様子が脳裏に浮かぶ。怒りと悲しみに体が熱くなる。 「幸一君の恋人の事ね」 私は驚いて京子さんを見た。京子さんは微笑んで私を見た。 「確か夏美ちゃんでしょ?春子ちゃんから聞いたわ」 京子さんは私を抱きしめた。柔らかい感触。 「可哀そうな梓ちゃん。幸一君の事を愛しているのに、こんなにつらい思いをするなんて」 私は京子さんの腕の中で唇をかみしめた。 そうよ。私は兄さんを愛してる。あの女よりも愛してる。それなのに何でなの。たかが血を分けた兄妹と言うだけで何でここまで惨めな思いをしないといけないの。 兄さん。好き。愛している。なのに何でなの。何で私を見てくれないの。何であの女を見るの。 「梓ちゃん」 京子さんの呼び声。私は顔をあげて京子さんの顔を見た。真剣な表情。 「話したい事があるの」 京子さんが私に話したい事。 何度聞いても教えてくれなかったこと。 「私を産んでくれた人の事?」 「そうよ」 私は私と兄さんを産んでくれた人の事は何も知らない。お父さんは何も言わないし、京子さんも何も言わない。 知っている事は二つ。お父さんと京子さんの高校の時の知り合いということと、京子さんと同じぐらい胸が大きかったという事だけ。 「どこから話せばいいのかしら」 京子さんは目を閉じて天を仰いだ。しばらくして私を見た。 「実はね、私とお父さんは結婚していないの」 言っている意味が分からない。 京子さんは私が物心つくころから傍にいてくれた。いや、家によく来て私たちの面倒を見てくれた。私が中学に上がってしばらくたったころにお父さんと再婚して家に住むようになった。少なくとも私はそう聞いた。 「どういうことなの?」 「梓ちゃん達には再婚したって言ったけど、正式には結婚していないのよ。婚姻届は出してないわ。結婚式をしなかったのは知っているでしょ?」 それは知っている。ただ単に面倒くさいからしなかっただけかと思っていた。二人とも人を呼んで披露宴を行う年齢でもない。だけど婚姻届の事は初めて知った。 「やっぱり最初から話すわね。お父さん、いえ誠一さんの家庭は複雑なのは知っている?」 知らない。私は首を横に振った。 「誠一さんは普通の家庭に生まれたけど、幼い時に交通事故で両親を亡くしたの。それで残された子供達は養護施設に入れられた。そして誠一さんは中学を出ると養護施設を出て就職して働きながら夜間の学校に通ったの。 誠一さんには妹がいて、妹は養護施設に来てからすぐに他の家に引き取られた。その妹が引き取られた家はひどい家で、妹を虐待していたの。 誠一さんは妹の事をずっと気にしていたけど、子供には何もできなかった。誠一さんは中学校を卒業すると働き出して、同時に妹を引き取ったの。 その時はいろいろ大変だった。何せ働いているとはいえ、誠一さんはまだ未成年だったから。その時は職場の方が色々手助けしてくれて妹を引き取る事が出来た。その経験が警察官を志す原因になったのだと思う」 はじめて知るお父さんの過去。 お父さんらしいと思った。お父さんは仕事でとても忙しい。昔から接する時間は他の父親と比べても少ないと思う。それでも愛されていないと感じた事はない。接する時間が少ないなりに、私と兄さんに父親としての愛情を注いでくれた。 「そうだったんだ。だから私達に祖父母はいないのね」 私は祖父母に今まで会った事がない。最初からいないから何とも思わなかったけど。 218 三つの鎖 15 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/02/05(金) 22 45 14 ID NJzB+isD 「誠一さんは夜間の高校に通っていたけど、妹は普通の高校に通学した。誠一さんは妹には苦労はかけたくなかったみたい。妹の同じ高校の友達に優子って子がいて、優子が誠一さんと初めて結婚した人。二人は高校の時から付き合い始めた。 誠一さんは夜間高校を出てから警察官になった。妹は高校を出てから家を出て遠くの看護学校に入った。優子は地元に就職した。 誠一さんと優子はしばらくして婚約した。結婚が決まった時に、二人は妹に招待状を出したわ」 京子さんの話す妹とは誰なのだろう。私に叔母がいるなど聞いた事がない。産んでくれたお母さんの親類もだ。 「お母さん。私に叔母っていたの?私が覚えている限り、会った事がないけど。それに産んでくれたお母さん、優子さんの親類にも会った事がないよ」 「聞いていれば分かるわ。話を続けるわよ。この妹は秘めた思いを誠一さんに抱いていた。妹は一人の女として誠一さんを愛していたの」 心臓がどくんと音を立てたのが分かった。お父さんの妹がお父さんに禁断の愛を抱いていた。 私と同じ。 「仕方がないと思うわ。家で虐待される状況で幼い時に生き別れた兄が助けてくれたのよ。その時の誠一さんはすでに働いていて、同年代の男の子とは一線を画す落ち着いた雰囲気だったわ。惹かれない方が無理よ。 妹が遠くの学校を選んだのも想いを断ち切るためだった。何せ愛する兄にはすでに恋人がいる。一緒にいるのはつらかった」 分かる。私も同じだから。 あの女と兄さんが仲良くしているのを見るたびに、胸が張り裂けそうになる。 「そんな事は知らない誠一さんは結婚式の招待状を妹に送った。妹は看護学校を出てから地元に戻らずに看護婦として、今は看護師と呼ぶけど、病院で働いていた。妹は誠一さんに会いに行った。 誠一さんは久しぶりに妹と会って喜んだ。もともと情の深い人よ。そうじゃないと幼い時に生き別れた妹を探して引き取るなんてできないわ。妹は家を出て暮らしてから一度も家に帰らなかった。妹は会うのがつらかったのね。 二人が再開した時、優子は実家にいた。久しぶりに会う兄妹に気を利かせたのもあるし、結婚の準備で実家にいたのもあるわ。 誠一さんは数年ぶりに会う妹が大人の女性になっているのに驚いて成長に喜んだわ。 妹は自分の想いを告げたの。愛しているって」 京子さんは一息ついて私のアイスティーを一口飲んだ。 私は京子さんの話にのまれていた。私と同じ境遇の人が身近にいたなんて。一度も会った事がないのもこれが理由かもしれない。 「誠一さんは驚いたわ。青天の霹靂だったのでしょうね。家族として愛していた妹に愛の告白をされたのだから。もちろん誠一さんは断ったわ。妹は愛する兄の性格を理解していたわ。だからこう言ったのよ。 私、兄さんがいないと生きていけない。でもそれは兄さんを不幸にする事ってわかってる。だからお願い。妹としての想いでだけでなく、女としての思い出をください。その思い出だけを胸に抱いて生きていきます。 誠一さんは妹が哀れになったのでしょうね。いえ、誠一さんも妹の事を妹として見られなかったのかもしれない。その夜、二人は体を重ねたわ。 次の日、妹は誠一さんのもとを去ったわ。結婚式にも出席しなかった。優子に兄をよろしくと葉書を送っただけだった。 妹は二度と誠一さんと会うつもりはなかった。誠一さんに告げたとおり、思い出だけを抱いて生きるつもりだった。でもね、妹は妊娠したの。誠一さんの子を。実の兄の子を」 心臓が高鳴る。信じられない話。お父さんに隠し子がいたなんて。いえ、私の兄か姉になるのだろうか。 一度も会ったことのない血の半分つながった存在。近親相姦の禁忌に触れる忌むべき子。一体どんな人生を送ったのだろうか。今はどこにいるのだろう。 「妹は悩みつつも子を産んだ。もちろん私生児として。父親がだれかなど言えるはずもなかったわ。そして子供を産んだ妹が仕事に戻ったころ、優子から葉書が来た。そこには妊娠した事が記されていた。 そしてしばらくたってから今度は高校時代の同級生から電話が来た。それは優子の死を知らせる連絡だった。妹は子供を預けて誠一さんのもとへ行った。 誠一さんは悲しみのあまり気が狂う寸前だった。あれだけしっかりした人なのに廃人のように呆然としていた。結婚して間もない妻と生まれてすらいない子供を同時に亡くしたのはそれだけ衝撃だったのね。 葬式が終わって、残ったのは誠一さんと妹だけだった。全てが終わって泣く誠一さんを妹は傍にいて慰めた。そして兄妹は二度目の禁忌を犯した」 私は京子さんの話に心臓が奇妙に高鳴るのを自覚した。京子さんの話はどこかおかしい。お父さんの最初の奥さんの優子さんは子供を産まずに死んだ。 219 三つの鎖 15 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/02/05(金) 22 49 14 ID NJzB+isD 私と兄さんは誰の子供なのだ。 「お通やとお葬式が終わって誠一さんはしばらく休職するように勧められた。周りの人が同情したのでしょうね。誠一さんはその通りにした。警察官のお仕事が務まる状態じゃなかった。 妹は葬式が終わると仕事を休職してまだ乳飲み子を抱えて兄の世話をするために兄の家に戻った。そこで誠一さんは初めて妹に子供ができた事を知った。妹はあなたの子供だと告げた。 その時、誠一さんの顔に浮かんだのは禁忌を犯した事を否応なしに突き付けられた怖れと恐怖、そして初めて目にした息子への愛情だった。誠一さんは赤子を抱いて涙を流したわ。 誠一さんは職場に復帰した。そして前にもまして働くようになった。妹も誠一さんの近くのアパートを借りて病院で働いた。 子供は誠一さんの養子にした。周りには父親の分からない妹の子供を引き取ることにしたと説明した。これは妥当な判断だわ。まさか妹との子供とは言えないもの。周りは妹の子供、つまり甥の将来のためにと思ったみたい。 誠一さんは後に話していたわ。死んだ妻と子供が生まれ変わってあらわれたように感じたと。禁忌を犯した忌み子でも、誠一さんにとっては血を分けた息子には違いなかった」 京子さんは息子と言った。つまり、生まれてきた子は男の子。 「妹は誠一さんのもとに通った。誠一さんも拒まなかった。といっても体を重ねることはなかった。妹はそれでも満足していた。誠一さんは再婚の意思はなかったし、兄と一緒に子供を育てる事が出来たから。 数カ月後に、妹は妊娠した事を知った」 京子さんは疲れたようにため息をついた。私のアイスティーを一口飲む。 「皮肉なものよね。妹が誠一さんに抱かれたのは二回だけ。それなのに二回とも妊娠した。近親相姦の禁忌に触れる忌み子を。 二人は話し合って、妹はこの地を離れることにした。そこは知り合いが多いから秘密を保つのは難しいという事情もあった。優子の親類もいるのも理由の一つだった。 もともと警察官は転勤が多いわ。特に若いうちや階級が上がれば。誠一さんは遠くへ転勤を希望した。そして希望は通った。周りは誠一さんの事を惜しんだけど、亡き妻の思い出のある土地にいるのはつらいのだと思ったみたい。 そして今の土地に来た。本当なら官舎に住む事も出来たのだけど、同僚の人目を避けるために今の家を購入して住んだ。本当ならこんなに広い家に住むのは難しいけど、色々な事情からできた。 昔はこのあたりは今ほど開発されていなくて不動産が安かったのもあるし、誠一さんが昔勤めていた伝手もあったみたい。 そして妹は子供を産んだ。娘だった」 私は鳥肌が立つのを感じた。 お父さんの妹が産んだのは娘。 その娘には兄がいる。 「生まれた娘はお兄ちゃんと同じように誠一さんの養子とした。妹は近くにアパートを借りた。 しばらくは誠一さんと妹は離れて暮らしていたわ。周囲には兄妹という事は言わなかった。そして誠一さんは子供と離れて暮らす妹が可哀そうになって家に住むように誘った。子供達には再婚するから一緒に住む事になったと告げて。 そして今に至るの」 私は全てを理解した。 「お母さんはお母さんだったのね」 「梓ちゃんを産んだ人は私と同じぐらい胸が大きいって言ったでしょ」 京子さんは茶目っ気たっぷりにウインクした。 信じられないような話。 京子さんは私と兄さんのお母さんで、お父さんと京子さんは兄妹。 「幸一君の名前を決めた由来は誠一さんから一文字と幸せになってほしいという願いを込めて」 歌うように京子さんは言葉を紡ぐ。 「梓ちゃんは誠一さんが名付けた。梓弓って知ってる?」 私は首を横に振った。 「梓弓は神事で使われる弓。鳴弦の儀っていってね、弓の鳴る音で魔を払う儀式があるの。誠一さんは近親相姦の結果に生まれた子供たちの未来に魔が寄らない事を願い子の名前にしたの」 お父さんの姿が脳裏に浮かぶ。無口で感情の起伏に乏しい父。それでも子供達に深い愛情を注いでくれた。 皮肉な話。お父さんは私に魔が寄らないように梓って名前を付けてくれたのに、私はお母さんと同じ禁忌を渇望する女になった。兄との禁断の愛を望む女に。 「梓ちゃん。私はね、近親相姦を勧めているわけじゃないわ。はっきり言って障害は山ほどある。私と誠一さんの場合は本当に運も味方して今まで奇跡的にばれる事はなかった。 それに幸一君には恋人がいる。幸一君は誠一さんの情に深いところはそっくりよ。きっと誠実に恋人を愛すると思う。春子ちゃんに聞いた限りは夏美ちゃんはとてもお似合いの子みたいだし。 220 三つの鎖 15 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/02/05(金) 22 52 08 ID NJzB+isD 仮に男と女の関係になってもつらいわよ。私は誠一さんに二回しか抱かれた事がない。誠一さんにも思う事はあるみたい。 私はね、梓ちゃんに絶望してほしくないの。確かに兄妹が愛し合うことは世間では禁忌と見られているわ。でもね例外がいるってことだけ知っておいてほしいの」 京子さんは話し疲れたようにアイスティーを一口飲んだ。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ アイスティーは冷たくておいしかった。 梓ちゃんは無表情な顔をしているけど、瞳は爛々と輝いている。 私は少し意外だった。私の話した話は自分で言うのもなんだけど相当ショッキングな話のはずだ。何せ自分が近親相姦の禁忌に触れて生まれた忌み子という事実を知ったのだから。 それなのに梓ちゃんにショックを受けた様子はない。興奮しているのは分かるけど。 私がこの事を今梓ちゃんに話したのは、梓ちゃんが可哀そうに感じたからだ。梓ちゃんは昔の私と同じ。血のつながった実の兄を愛し、それゆえに苦しんでいる。兄に恋人がいるところまで同じだ。 そんな娘が哀れに感じた。だから例外があるという事を、可能性は限りなくゼロに近くても無ではない事を知ってほしかった。 「お母さん。聞いてもいい」 梓ちゃんは私を見た。表情から何を考えているかは読み取れない。 「ここまで話したのだから遠慮しないでいいわよ」 「この事を私達に教えるつもりはあったの」 「できれば墓の下までもっていきたいというのが私と誠一さんの考えだけど、現実的には難しいわ。戸籍を見れば両親がおかしい事は分かるもの。だから成人した時に母親の事だけ伝えるつもりだった。 もちろん、本当の父親については言わないわ。昔私が付き合っていた人とごまかすつもりだった。誠一さんの養子にしたのは私生児だと将来的に不利になる可能性があるからって理由で伝えるつもりだった」 そう。現実問題として全てを隠す事は不可能だ。それならば当たり障りのない部分を伝えることで絶対に知られてはならない事実を覆い隠すしかない。 「もう一ついい」 梓ちゃんは無表情に私を見た。何を考えているのだろう。 私は無言で頷いた。 「お父さんの最初の結婚相手の優子さんっているでしょ」 心臓がかすかにきしむ。私の愛する人を奪った人。 「その人が死んだ原因って何なの」 今度ははっきりと心臓が跳ねた。 梓ちゃんは私を無表情に見つめる。瞳が形容しがたい光を放っている。その瞳に心が揺さぶられる。 「妊娠して入院していた時に階段からこけたらしいわ」 私は動揺を隠して言葉を紡いだ。暴れる心臓を必死に抑えた。 「そうなんだ」 梓ちゃんは無表情に私を見た。その瞳に心が揺れるのを抑えられない。 おかしい。私は今まで言葉では言い表せないほどの抑圧された人生を送ってきた。養父母による虐待、実の兄に懸想していた苦しみ、愛する人に恋人ができた嫉妬、禁忌を犯した喜びと恐怖。そんな環境の中で私は自分の感情を抑制することは必要不可欠だった。 それなのに、実の娘の視線に背筋が寒くなるほどの恐怖を感じる。 「そうなんだ」 梓ちゃんは同じ言葉を繰り返した。形容しがたい恐怖が私を包み込む。 まさか。知っているの。 「お母さん」 梓ちゃんは私を見上げた。視線を逸らしたい衝動を私は必死に抑えた。 「もしね、愛する人が他の女を見ていたら、お母さんならどうする?」 血のつながった実の娘の言葉が私の心に突き刺さる。 知っているはずがない。もう十数年も前の事だ。 「うんうん、お母さんはどうしたの?」 心臓が恐怖に早鐘をうつ。 知っているの。いや、私以外に知っている者などいない。これは私だけの秘密。 思考が乱れる。異様に喉が渇く。早鐘を打つ心臓の鼓動をはっきりと感じる。 「別に。私は何もしなかったわ」 やっとのことでそれだけの言葉を吐きだした。声は震えていなかった。これも長年の抑圧のせいかなのかもしれない。この状況でも表面上は平静を保つ事が出来た。 梓ちゃんは私に一歩近づいた。目の前に娘の顔が近付く。梓ちゃんの瞳が放つ光が私を射抜く。 「本当にそうなの?」 形容しがたい恐怖が私を包み込む。冷たい汗が背中を流れる。 一瞬が永遠に感じる。 終わりは唐突に来た。梓ちゃんは窓の外を見た。私もつられてみると、村田さんの家から誰かが出て行くのが見えた。 あれは確か幸一君の彼女の夏美ちゃんだ。私が働いている病院で幸一君の傍にいたのを覚えている。 幸一君の彼女を見る梓ちゃんの瞳に形容しがたい感情が宿る。その瞳を向けられたわけでもないのに背筋に冷たいものが走る。 221 三つの鎖 15 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/02/05(金) 22 53 33 ID NJzB+isD 「お母さん。色々話してくれてありがとう。私用事があるから行くね」 そう言って梓ちゃんは立ち上がり部屋を出た。 梓ちゃんの後ろ姿が昔の私とかぶる。 私は自分の部屋に戻りベッドに倒れこんだ。何度も大きな息を吐く。全身に冷や汗をかいていた。全身がどうしようもなく震える。 深呼吸する中で昔の記憶が水泡のように脳裏に浮かぶ。 優子が入院していた病院の屋上で、私の腕の中の赤子だった幸一君を見て恐怖と嫌悪に目を見開く優子。逃げるように私に背を向ける優子を私は…。 吐き気がこみあげる。私はトイレに駆け込んだ。込み上げる吐き気のままに私は嘔吐した。口の中に胃液の酸味が広がる。 荒い息を落ち着かせてから私は掃除をしてリビングに下りた。口をすすぎため息をつく。 梓ちゃんの様子は今までに見た事のないものだった。私は小さいときから、それこそ生まれた時から梓ちゃんの事を知っている。梓ちゃんのことは全て分かっているつもりだった。 それなのに、さっきの梓ちゃんは私の知っている梓ちゃんとは別人にしか見えなかった。 私は早まった事をしてしまったのかもしれない。梓ちゃんに伝えるべきではなかったのかもしれない。 梓ちゃんの表情が脳裏に浮かぶ。形容しがたい奇妙な光を放つ瞳。その瞳に魅入られた私が感じたのは言い知れない恐怖だった。 私は窓の外を見た。夜なのに雲がはっきりと見える。明日は雨が降りそうだった。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/warofbrains/pages/479.html
鎖錠医 リアン UNDER SIDE コスト パワー HP 種族 学問 5 3 2 医者 医学 ▶リワード▶あなたの手札が7枚以上あるかぎり、この ユニットのコストは(3)減る。 所属国 MAGNA レアリティ RARE CV 芹澤優 illust 高坂 巧 フレーバー 凶暴女に強権女。 いいわ。みんなまとめて遊んであげる。 ~悪女 アラディア~ ▷効果の解説 ▶このユニットからの攻撃で相手ユニットのみを破壊したとき、 リワードスペルからランダムで選ばれた1枚をあなたの手札に加える。 手札が最大(9枚)以上になる場合、過剰分となるカードは手札に加えられる前に消滅する。 「リワード」効果で手札に加えられるリワードスペルは全3種。 +リワードスペル カード名 レア 学問 コスト テキスト 銅貨 TOKEN 4 1 ▶ターン終了時までメモリーを2つ増やす。 銀貨 TOKEN 4 1 ▶ユニット1体を+0/+1する。 金貨 TOKEN 4 1 ▶ユニット1体を+1/+0する。 ▶あなたの手札が7枚以上あるならば、このユニットの召喚コストを3減らす。 この効果は、このカードが手札にあるときにのみ効果を発揮する。(手札が7枚以上であっても、デッキ内や場にいるこのユニットは表記コストのまま) 手札の枚数を常に参照し続け、手札が7枚以上ある状態でのみ効果がある。 ▷備考 第3弾『Sword of Nemesis』に収録されたRAREのカード。 報酬を得られる「リワード」能力と指定条件を満たすと2コストで召喚できる【医者】ユニット。 2ターン目にこのユニットを出すには、 後攻で何もせずに2ターン目を迎えて7枚になった手札からの召喚。 もしくは、後攻で<MEMORY>から<精神の侵蝕者>召喚、 2ターン目に<精神の侵蝕者>で攻撃して効果を発動できれば手札が7枚になる。 手札枚数の条件を満たせば2コストで3/2、リワード持ちと優秀な能力。 反面、体力2のため、相手の2コストユニットと相打ちになったりすると勿体ない。リワードの能力を活かしづらいのも泣き所。 高めの攻撃力を活用できるよう、召喚する際は気をつけたい。 +セリフ 召喚 痛かったら言ってくださいね 攻撃 破壊 フレーバーでは、「凶暴女=<輝く非道 アンジェリカ>」「強権女=<腐敗正義 ディアマンテ>」を指し、 <悪女 アラディア>の彼女たちに対する姿勢が感じられる。 初出から実装までに、ステータス値が「3/3」⇒「3/2」に調整されている。 △ ▽コメント 名前
https://w.atwiki.jp/preciousmemories/pages/6698.html
《月読 鎖々美(058)》 キャラクターカード 使用コスト2/発生コスト2/緑/AP20/DP30 【メイド】 自分の「月読 鎖々美」または自分の【メイド】を持つキャラが登場した場合、自分の全てのキャラは、ターン終了時まで+10/+10を得る。 (うわぁ、蝦怒川さん、すっごい綺麗だよね。アイドルもびっくりだよ) ささみさん@がんばらないで登場した緑色・【メイド】を持つ月読 鎖々美。 自分の月読 鎖々美または【メイド】キャラが登場した時に自分キャラ全てのAP・DPを10上昇させる効果を持つ。 月読 鎖々美または【メイド】キャラを登場させるだけで全体強化が可能。 対象制限がなく使いやすい。 カードイラストは描き下ろし。フレーバーは第11話「恋愛なんて都市伝説」での鎖々美のセリフ。 関連項目 月読 鎖々美 収録 ささみさん@がんばらない 01-058 パラレル 編集
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/10908.html
運命の赤い鎖 C 光文明 (2) クロスギア ■クロスギア ■S・トリガーX ■このカードがクロスされた時、相手のクリーチャーを1体選ぶ。その後、このカードがクロスされたクリーチャーと選ばれたクリーチャーをタップする。このカードがクロスされている間、これらのクリーチャーはアンタップされない。 自分のクリーチャーもろとも相手クリーチャーを永久にフリーズ。 イメージは光版のデッドリー・ラブ。 作者:仙人掌 フレーバーテキスト 良かったね。私とあなた、どうやら永遠に結ばれる運命みたいよ。 収録 DMMS-01「血流編(ウィキッド・ブラッド)第1弾」 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/4764.html
封印の鎖(真DM2) 効果モンスター 星3/光属性/天使族/攻1000/守1100 このカードがフィールド上に表側守備表示で存在する限り、戦士族モンスターは攻撃宣言する事ができない。 下級モンスター 光属性 天使族 行動制限 同名カード 封印の鎖(OCG)